特別審査員に訊く! ヤマザキコレ先生ロングインタビュー[前編]

世界を織り成す魂のルーツ
描き続けることが世界を生む

慣れるまで量を描く、そして面倒くさがる大事さ。

はじめ、漫画を描く時は誰を参考にしていたんでしょうか?

ヤマザキ:
最初の頃は、平野耕太先生みたいな絵の描き方で漫画を描いたりしましたよね。他には筆で主線を引いたりとか……。

新福:
今とは全然違うけど、どうして今の形になったんですか。

ヤマザキ:
描いてる内に、線を引くのが楽しくなってきたというか。髪の毛とか瞳とか。実際、墨筆で線を引くのは楽しかったんですけど、高校生くらいになると専門学校の体験入学とかあるじゃないですか。そこで先生に自分の原稿を見てもらったわけですよ。そしたら、「最初はGペンとか丸ペンとか使った方が良いよ」って言われて。「そりゃそうだな」って(笑)。

新福:
基本は大事ですからね(笑)。それで、Gペンとかを使うようになったんですか?

ヤマザキ:
そう、それで使うようにしたんですけど、全然上手く描けなくて。それからは、ちょっと時間が掛かりましたよね。慣れるまで、とにかく量を描くことになったんですけど、慣れた今となっては「クッソ楽しい!」って感じです。

新福:
どういうところが楽しいんでしょうか。

ヤマザキ:
Gペン、丸ペンは自分的には最高だなって思ってて。指先一つの感覚で太い線も細い線も自由自在…とまではいかないですけど、かなりコントロールできるので付けペンが一番楽で楽しい。さらにはコスパもいいなぁと。慣れるまで大変なんですけどね。

新福:
微妙な感覚が要求されるけれど、そこの勘が掴めた先は、かなり楽しくなると。

ヤマザキ:
あと、アナログだと基本一発勝負なのでCtrl+zが必要ないのも良いですよ(笑)。

新福:
リアルな原稿だと、アンドゥ(undo)もリドゥ(redo)も出来ないですもんね(笑)。真面目な話、だからこそ緊張感から集中力が保たれて良い線に繋がるということかもしれない。

ヤマザキ:
そう。緊張もそうだけど、何より失敗したらホワイト修正めんどくせー!!って思うと集中できますよね(笑)。何事も面倒臭がる気持ちは大事。

新福:
結構、ヤマザキさんとお話してると出ますよね。「面倒くさがる大事さ」的なお話。

ヤマザキ:
いや、でもね。面倒くさがるって大事ですよ。面倒だから「効率」を良くしていけるわけだから。

新福:
「効率を良くしていく」ということと「手を抜く」ということは似て非なるものということですからね。面倒という気持ちが画面に出ないようにしていくというのも大事。

ヤマザキ:
そうそう。誰だって苦手なことや面倒だなと思うことはあるし、あって当然なので、最終的にそれが良く見えるように頑張ればいいんですよ。

新福:
具体的にヤマザキさんが原稿作業中に面倒だな嫌だなと思うのはどの辺りですか?

ヤマザキ:
下書きっスね。いつか下書きを抜いて、作業をしたいと思ってて……。そのためにも目下の目標はもう少しネームを丁寧に描きたいというところ。

新福:
それは良いですね~!僕も何が起こっているかネームでよくわかる!(笑)

ヤマザキ:
はっはっは(笑)。 都合三回も同じ画面の絵を描くのはシンドいから、ネーム丁寧に描いてそこからすぐにペン入れという構図を作りたくて今は頑張ってますね。

質を伴った量を描こう!

描く上でどうしてもテンションが上がらないコマ等、どうやってモチベーション上げて描いてますか?

新福:
新人さんの原稿だと、コマ毎やキャラ毎に愛がバラつくというか、描きたいものと描きたくないものでクオリティが大きく変わることが多い印象があります。ヤマザキさんはモチベーションをどうコントロールされてますか?

ヤマザキ:
うーん、考えたこともなかったなぁ。描きたくなくても描かなきゃ世界が出来上がらないから描くしかないというか…。

新福:
それはまた、にべもないお言葉…!でも面倒だなぁと思うコマもあるわけですよね。

ヤマザキ:
別のインタビューでもお答えしたかもなんですけど、私、個人的には野郎を描くことにテンションが上がらなくて(笑)。「ここは野郎ばっかだ面倒くせぇな!どうしよう!」って思うことはもちろんありますけど、そういう時はその中にも「でもスーツの皺は好きなんだよな」「髪のペン入れは楽しいよな」っていう楽しみを見出すのが良いのかなと。

新福:
ヤマザキさん自身は、背景を描くこと自体も好きだというのもありますよね。多くの方は背景を描くのがやっぱり辛い作業に入るんじゃないかなと思うんです。

ヤマザキ:
でも、漫画――特にファンタジーって世界を作る楽しさがあるじゃないですか。だから、背景も描くのを楽しめた方が読者さんも自分も嬉しいんじゃないかと。個人的な話に戻ると、背景描くのは好きですね!時間さえあれば一コマに何十時間だってこだわりたいくらいです。

新福:
とはいえ、苦手な人にいきなり「好きになれ!」は乱暴なので(笑)。具体的な質問なんですけど、見開きページ上でどう描き込んでいくと良く見えるよというような『技』はありますか?

ヤマザキ:
あまり意識したことはないけど、入れるべきところと、入れずに済むかなと思うところは個人的にありますね。描き込むっていう意味だと、見開き上の中央に近づくにつれ、描き込んでいくようなイメージを持ちながら臨機応変に、ですかね。

新福:
なるほどね。それなら逆に紙上で読者さんの手が触れる箇所は背景細かく、というよりも印象的なカットを大きめに入れる方がバランス取れそうですね。

ヤマザキ:
あとは、見開き上で大きく流れで捉えて、描き込む必要があるコマとそうでないコマを判別する。読者さんが読み飛ばすコマをねちねち描いても見てもらえなくて悲しいので、そこの塩梅はあるかもです。

新福:
描き込む必要があるコマとそうでないコマってどう判別をつけるんですか?

ヤマザキ:
そりゃ、質を伴った量を描くんスよ!しんどいけど!!その人のテンポ、その作品の間があって決まることだからここだけは自分が頑張らないといけないところだと思います。

新福:
量に戻ってきたな(笑)。でも、質を伴った量というのは良い表現ですね!質を伴うというのは、結局「考えながら」やるということでしょうか。

ヤマザキ:
ですね。もっと言うと、調べて観察して考えながら描くことが、背景だとすごく大事です。川に転がる石を描くにしたって、どうやってその石が出来上がるのか知らないと角の立った石を描いちゃうと思いますから。理屈がわかってないとどこに注視すれば良いかわからないですよね。新しい家しか見たことない人はやっぱり新しい家しか描けない。なので、想像だけで古い家を描く。そうすると、これが新しい家になってしまう。なるだけ見てそのまま描かないと。

新福:
見たままを見たままに描く、というと簡単に言えてしまうんですけど、実際問題それがすごく難しいということでもありますよね。

ヤマザキ:
なので、出来ることなら自分の目に焼き付けるために外に出かけることが、背景を描く上で助けになるんじゃないかなと思いますよ。意識して見る、意識して調べる、意識して描く。それらが大事になるのではと……。恐らく、初めて描いた時ってどれもこれも初めて描くものばかりで時間が掛かるし、へなちょこだしで挫けそうになると思うんですけど、次同じものを、意識して見て・調べて・描く時は、それより絶対早くて上手くなるので。

新福:
なるほど。そうやって、作品をたくさん描く事で自分の中に背景についてのストックが増えるということですね。

ヤマザキ:
そうそう。後は、「キャラだけじゃなく背景込みで愛を感じて!背景描くの、好きになって欲しい!」です(笑)。

新福:
月刊誌だと自分だけで作業することが初めは多いですからね、好きであった方が良いと思いますね。

ファンタジーコミック部門の
募集要項はこちら!

このページの先頭へ